タイ・マッサージWEB講座

第8章:側臥位で下肢から背部へ

 第8章の概要

《 施術の流れと順序 》

第8章は座位で行ないます。ストレッチの大技が中心となっており、他の章にはなかったダイナミックな動きを与えるのが特徴です。

 8-01 足の親指で背中を圧迫

  

手順

① 第7章が終わるとマッサージを受ける人は胡坐を組んで座っています。その後ろに廻って床に腰を降ろします。
② 相手の両手首を持ち、術者の手首を握ってくれるよう要請し、互いに手首を握り合うようにします。
③ 上体を前方にやや倒し気味にしてバランスを取りながら、
④ 足の親指で相手の脊柱起立筋群を圧迫します。

施術の目的

脊柱起立筋の圧迫。

補足

施術のコツ:上体が後ろ側に反ると相手に負担を与えます。上体は軽く前傾しているのが適正な肢位です。

 8-02 僧帽筋横行部を中央に寄せるストレッチ

  

僧帽筋横行部を中央に寄せるストレッチ

手順

① 胡坐を組んでいる相手の後ろに廻り、
② 頚椎と胸椎の間くらいの高さの肩関節内側5cmくらいの部分両側に術者の手首を当てます。
③ 手首部分を滑らせないように気をつけながら左右の手を互いに近づける方向で力を加えます。
④ 肩関節から10cmくらいのところの2箇所から脊柱方向に向けて施術します。

施術の目的

僧帽筋横行部のストレッチ。

補足

施術のコツ:手首部分が背中で滑ってしまうとストレッチが効きませんし、皮膚を引っ張ってしまって相手に不快感を与えます。力を加減して手首が滑らないようにします。
⇒本施術は次項に続きます。

 8-03 項部を手根部で圧迫

  

項部を手根部で圧迫

手順

① 前項に続いて胡坐を組んで座っている相手の後ろから施術します。
② 相手の項の両側に、術者の左右の手首部分をあて、
③ 手首部分を滑らせないように気をつけながら左右の手を互いに近づける方向で力を加えます。

施術の目的

柱起立筋項部の圧迫。

補足

施術のコツ:注意:力の加え過ぎは禁物!目的は脊柱起立筋です。頸の真横を圧迫していけません

 8-04 脊椎のストレッチ:縦方向に

  

手順

① 前項に続いて、胡坐を組んで座っている相手の後ろから施術します。
② 術者はこの後上方に伸び上がる下準備として、片方の脚を曲げるなどして自身の高さ位置を調節します。
③ 相手の側頭部に手のひらをあて、拇指で頭蓋骨の縁を左右からしっかりと支え、
④ 相手の上体を天井方向にゆっくりと持ち上げ、その後一呼吸おいて床に降ろします。

施術の目的

脊柱周囲の諸筋をストレッチする。

補足

施術のコツ:上肢の力だけで相手の上体を持ち上げようとしても上手くいきません。術者は脇をしっかりと締めて自身の体ごと脚の力を使って天井方向に伸び上がるようにします。

 8-05 僧帽筋下行部のストレッチ:片側から

  

僧帽筋下行部のストレッチ:片側から

手順

① 胡坐を組んで座っている相手の後ろから施術します。
② 術者は、この後③で前腕を肩の稜線の後ろ側にあてがうのに適した高さにまで、片方の脚を曲げるなどして位置を調節します。
③ 術者の右前腕を、相手の左側頭部から項にあて、
④ 左前腕の肘に近い部分を肩の稜線の少し手前にあてます。
⑤ ③の右前腕で相手の頭を右寄りに押さえておき、左前腕を外側かつ下向きに押します。

施術の目的

僧帽筋下行部のストレッチと圧迫。

補足

施術のコツ:本施術で前腕をあてるのに適した範囲(sweet-spot)は、肩甲棘の上の8cm×3cmくらいの範囲に過ぎません。肘を曲げて狙い通りの場所に前腕をあてましょう。
本項は左右からそれぞれ施術します。説明文中の左右は読み替えてください。

 8-06 僧帽筋下行部のストレッチ:両側に

  

手順

① 胡坐を組んで座っている相手の後ろから施術します。
② 左右の手のひらを下に向け、 ③ 前腕の肘に近い部分を相手の肩の稜線の後ろ側、肩甲棘の上の8cm×3cmくらいの範囲にあてます。
③ 左右の前腕で左右の前腕を外側、かつ下向きに押します。

施術の目的

僧帽筋下行部のストレッチと圧迫。

補足

施術のコツ:マッサージを受ける人の上体が軽く前傾し、肩の稜線の後ろ側に術者が前腕を使って乗りかかるような体勢で施術します。

 8-07 前頚部のストレッチ

  

前頚部のストレッチ

手順

① 胡坐を組んで座っている相手の後ろから施術します。
② 前項で左右の前腕の肘関節に近い部分を、肩の稜線の後ろ部分に置いています。そこはそのままにして、
③ 拇指の背側面を相手の下顎にあて、
④ 前腕で相手の上体を幾分前方に押しながら、拇指の外側で顎を持ち上げます。

施術の目的

前頚部のストレッチ

補足

施術のコツ:施術を通じて、前腕の向きが常に床と平行になるようにします。

 8-08 肩を揉む

  

手順

① マッサージを受ける人は胡坐を組んでいます。その背中に近よって座り、
② 片方の手を肩に掛けて上体が前方に倒れないようにして肩の稜線を揉みます。

施術の目的

僧帽筋下降部の圧迫。

補足

施術のコツ:この部分が非常に硬く感じられる場合は、次項のスラックオフ法で施術してください。
本項から08-14までは一連の施術となります。

 8-09 肩を揉む:肩甲骨を持ち上げて

  

手順

① マッサージを受ける人の背中に近より、
② 相手の左手を背中に廻し、術者の左膝で前腕を支えます。
③ こうすると肩の稜線(僧帽筋下降部)が緩むので、前方に四指をあて、拇指で肩を指圧します。

施術の目的

僧帽筋下行部と肩甲挙筋の圧迫。

補足

施術のコツ:術者の左膝を上手に使って、肩甲骨を全体的に上方に挙げれば表層にある僧帽筋下降部と同時に、深層にある肩甲挙筋の両方が緩み、深い部分に指圧が及びます。

 8-10 肩甲骨内側縁の指圧:肩甲骨を持ち上げて

  

手順

① 前項に続きマッサージを受ける人の背中近くに位置し、相手の左手を背中に廻し、術者の左膝で前腕を支えています。
② 術者は左手で相手の左肩を軽く握り、膝と肘を使って肩甲骨を脊柱よりの方向に移動させます。
③ 右拇指で肩甲骨内側縁と脊柱の間の部分(=肩甲間部)を指圧します。

施術の目的

僧帽筋下行部、菱形筋の圧迫。

補足

参考:肩甲間部の筋がやわらかい人は、②の段階で肩甲骨内側縁がくっきりと目立つことでしょう。この手法で上肢全体を胴体から離して持ち上げることができます。

 8-11 上腕の圧迫:肩甲骨を持ち上げて

  

上腕の圧迫:肩甲骨を持ち上げて

手順

① 前項に続き、術者は胡坐を組んだ相手の後ろ側に位置します。背中に廻した相手の左手は術者の左膝で支えています。
② 左手で相手の左上腕を握り、腋から肘付近まで四指と拇指で挟んで指圧します。

施術の目的

三角筋の圧迫(肩の掌圧で)と上腕二頭筋の指圧(腋から肘まで)。

補足

参考:①は上腕二頭筋が緩む姿勢(=スラックオフ)です。

 8-12 肩甲挙筋のストレッチ

  

肩甲挙筋のストレッチ肩甲挙筋のストレッチ

手順

① 前項に続き、術者は胡坐を組んだ相手の後ろ側に位置し、
② 左手で相手の左手首を握り、頭の後ろに持ってくると同時に、左肘の尖った部分(肘頭)を肩甲骨上角近くの棘突起の上にあてます。
③ 肘頭で棘突起を床方向に押し下げ、ここを支点にして手首を右方向に捻ります。

施術の目的

肩甲挙筋のストレッチ。

補足

施術のコツ:②の段階で、左手首は手前に引き(=前腕を傾けて相手の手首を持つ)、肘頭が肩甲骨上角近くの棘突起の上に食い込むようにします。

 8-13 側腹部のストレッチ

  

側腹部のストレッチ

手順

① マッサージを受ける人は胡坐を組んでいます。術者はその左側にまわり、左膝で相手の左大腿部が持ち上がらないよう、軽く押さえます。
② 相手の右手首を持ち、左の大腿の上に置きます。
③ 相手の左の掌を左耳の上に押し当てて指先を天井方向に向けます。
④ 自身の左手を前方から廻して相手の右肩を軽く握ります。
⑤ 右手で相手の左肘を覆うように持ち、
⑥ 相手の右肩を手前に引き寄せつつ、左肘を上方に送り出すようにします。

施術の目的

上腕三頭筋と体幹の側面をストレッチする。

補足

施術のコツ:③で指先が後頭部に向いていると施術したときに相手の上体が左に旋回してしまい、側腹部のストレッチが効きません。四指の先が天井方向に向くよう気をつけましょう。
8-09から本項までは一連の施術となっています。この後、8-09から本項までを反対方向から施術します。

 8-14 胸郭を広げる:腹の前で手を組んで

  

胸郭を広げる:腹の前で手を組んで

手順

① 術者は、胡坐を組んでいる相手の背中の後ろに立ちます。
② 相手の両手を腹の前で交差させ、その手首を左右から握ります。
③ 術者はつま先立ちになりながら相手の肩甲骨の間に自身の両膝を当て、
④ 相手の呼吸に合わせて左右の手首を上方に引きます。

施術の目的

胸郭を上方に広げる。

補足

施術のコツ:本施術は術者の体格が相手と同等以上に大きい場合のみ施術可能です。

 8-15 胸郭を広げる:頭の後ろで手を組んで

  

胸郭を広げる:頭の後ろで手を組んで

手順

① 術者は、胡坐を組んでいる相手の背中の後ろに立ち、左右どちらかに自身の下半身をねじって、膝の側面を相手の背中に当てます。
② 頭の後ろで左右の指を組んでもらい、
③ 左右の手で相手の肘関節を前方から手前に引き寄せながら、
④ 同時に膝の側面で相手の上体を前方に押し出します。

施術の目的

胸郭を広げる。

補足

施術のコツ:膝の側面で相手の背中を押しながら左右の肘を手前に引くことで上体のバランスを保つようにします。
体格の差に関係なく施術が可能です。
本施術は次項に続きます。

 8-16 体幹を上方に引き伸ばす

  

手順

① 前項終了時点では、マッサージを受ける人は頭の後ろで左右の指を組み、胡坐を組んでいます。術者はその背中の真後ろに立ち、膝の側面を相手の背中に当てています。
② 相手の左右の手首をまとめて持ち、
③ 膝の側面で相手の上体を前方に押し出しながら手首を天井方向に引きます。

施術の目的

体幹を上方に引き伸ばす

補足

施術のコツ:膝の側面で相手の背中を押しながら手首を引き上げることで上体のバランスを保つようにします。

 8-17 体幹を捻る:頭の後ろで手を組んで

  

手順

① 前項終了後、マッサージを受ける人にお願いして頭の後ろで左右の指を組んでもらいます。
② 右足を相手の右大腿部の上に置きます。
③ 相手の左右の肘部分に前方から手をあて、
④ 左の肘を持って相手の上体を左方向に旋回させます。

施術の目的

体幹の回旋ストレッチ。

補足

施術のコツ:“④”で、左肘に描かせる軌跡は水平方向より上方にもっていくと上体のバランスが崩れずに施術できます。

 8-18 体幹を大きく捻る

  

体幹を大きく捻る体幹を大きく捻る体幹を大きく捻る体幹を大きく捻る

手順

① マッサージを受ける人は胡坐を組み、頭の後ろで手指を組んでいます。
② 術者はその後ろにしゃがみ、上腕と前腕の間に前方から左右の手を入れて手前に出し、相手の前腕を手のひらで押さえます。
③ 相手の左大腿を術者の左膝で押さえます。
④ 術者は肘を伸ばして相手の上体を前方に屈めさせ、上体をいったん左方向に軽く旋回させ、
⑤ その後大きく右方向に旋回させて、
⑥ 右への旋回が限界に達したら術者の肘を曲げて相手の上体を手前に引き寄せて終わります。

施術の目的

体幹を大きく捻る

補足

施術のコツ:本施術は左右からそれぞれ行ないます。説明文の左右は読み替えてください。

 8-19 腹筋のストレッチ

  

手順

① 前項終了時、術者はマッサージを受ける人の上腕と前腕の間に前方から手前に手を入れ、手首を曲げて相手の前腕を手前から手のひらで押さえています。
② 術者は左右の膝を揃えて相手の腰にあて、左右の足先を外側に開いて足指を床に付け、腰付近にあてた膝を支点にして、相手の上体を手前に引きます。
注意:このとき術者の膝の位置をなるべく低くします。
③ このとき同時に声を掛け、胡坐を解いて脚を伸ばしてくれるよう依頼します。
④ 相手の頭が術者の腹に載ったら相手の前腕から手を離し、声をかけて、両手を体の両側に伸ばしてくれるよう依頼します。
⑤ 以上の体勢が整ったら、大腿部で相手の上体を持ち上げ、一呼吸ほどの間この体勢を維持します。 ⑥ 「お尻を落としてください」とお願いし、相手の背中を押しながら起き上がります。

施術の目的

腹直筋のストレッチ。

補足

施術のコツ:“②”で術者の膝の位置をなるべく低い位置に置くことが上手く施術するコツ。
相手の体重が極端に重い場合、また、股関節の関節可動域が少ない術者や、腹筋や大腿四頭筋の筋力の弱い術者にはこの施術は向きません。
⇒この施術は次項に続きます。

 8-20 体前屈を補助

  

体前屈を補助

手順

① 前項終了時にはマッサージを受ける人の胡坐は既に解けており、下肢を伸ばした状態で座っています。
② 術者は起き上がり、「前屈のお手伝いをするので足先に手を伸ばしてください」とお願いし、相手の背中を数箇所押します。

施術の目的

脊柱起立筋のストレッチ。

補足

施術のコツ:体前屈を苦手とする人には:脊柱起立筋に軽く手のひらを添えて前屈を促してください。手を添えていなかった一回目に比べ、ほとんどの人がより深い前屈ができるようになります。

 8-21 肩たたき:握り拳の側面で

  

肩たたき:握り拳の側面で

手順

① 下肢を伸ばして座っている相手の後ろにまわり、肩たたきをしますます。
② ごく軽く握った左右の手の小指側の縁を相手の背中に交互に打ち付けます。
僧帽筋下行部・横行部・上行部の範囲をすべて叩きます。

施術の目的

僧帽筋に刺激を加える。

補足

施術のコツ:項部を叩く際にはごく軽く小指の側面部分が触れるのみの極小の刺激に留めてください。
そのほかの部分については大胆に叩いて結構ですが、その場合も相手の頭がグラグラと揺れるような叩き方にならないよう注意しましょう。左右の拳をリズム良くあてることが肝心です。

 8-22 肩たたき:おにぎりで

  

肩たたき:おにぎりで

手順

① マッサージを受ける人は下肢を伸ばして座っています。その後ろから肩たたきをします。
② 両手を軽く合わせ、手のひらに空気の部屋を作ります(空気でおにぎりを作るような感じです)。
③ 片方の手の甲を使って僧帽筋下・横・上行部を叩きます。

施術の目的

僧帽筋に刺激を加える。

補足

施術のコツ:ごく軽く閉じた手指の隙間から空気が漏れ、「ぱふぱふ」と音が出ると雰囲気がでます。

 8-23 肩たたき:団扇の骨で

  

手順

① マッサージを受ける人は下肢を伸ばして座っています。その後ろから肩たたきをします。
② ここでは団扇の骨のように五本の指を自然に広げたまま、左右の手の指先を軽く合わせます。
③ 僧帽筋下行部・横行部・上行部の範囲をすべて叩きます。

施術の目的

僧帽筋を叩く。

補足

施術のコツ:項部を叩く際にはごくごく軽く、小指の側面部分が触れるのみの刺激としてください。
そのほかの部分については大胆に叩いて結構ですが、相手の頭がグラグラと揺れるような叩き方にならないようご注意ください。不快感を与えることがあります。
ごく軽く開いた閉じた手指の隙間から空気が漏れ、「ぱちりぱちり」と音が出ると雰囲気がでます。

 8-24 肩たたき:指先で

  

肩たたき:握り拳の側面で

手順

① マッサージを受ける人は下肢を伸ばして座っています。その後ろから肩たたきをします。
② 四指をだらりと伸ばして指先を目的の場所に勢い良くあてます。
そのままですと突き指になってしまいますので、指先が当該部位に触れた瞬間に指の関節を指先から順に曲げはじめ、 ③ 最後には中手指節間関節までを屈曲し、緩い拳でパンチをするような形で終わります。

施術の目的

僧帽筋全て(下行部・横行部・上行部)の範囲を軽く叩く。

補足

施術のコツ:自身の大腿部で練習しましょう。突き指しないようにご注意を。利き手ならわりと早く習得できます。両手で上手く施術できるまでには相当量の練習が要求される、かも。

 8-25 背中の軽擦

  

背中の軽擦

手順

① マッサージを受ける人は下肢を伸ばして座っています。その後ろから手のひらを使って背中を軽く擦ります。
② 脊柱からスタートして肩関節方向に擦ります。

施術の目的

背部の表層を撫でる。

補足

施術のコツ:終わったら、本施術をもって加療を終了する旨、挨拶します。