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第5章:仰向けで上肢に施術

 第5章の概要

《 施術の流れと順序 》

仰向けになった相手の上肢に施術します。
マッサージを受ける人の掌を持って上肢を胴体と15度くらいの離し、胴体の横に座ります。
この章では、仰臥位で上肢への施術をします。他の章との密接な連続性はないので、本章だけ切り離して他の章と組み合わせてもよいでしょう。<

 5-01 屈筋腱に沿って掌をこする

  

屈筋腱に沿って掌をこする

手順

① マッサージを受ける人の上肢を体幹から斜め15度くらい離し、手のひらを上に向けます。
② 術者は肩関節の方向に体を向けて座り、手のひらを両手で持ち、前腕を自身の大腿の上に置きます。
③ 四指をマッサージを受ける人の手の甲にあてて支え、両手の拇指の腹を使い、拇指球と小指球の間、手首中央掌側にある窪みから各指の腹まで、屈筋腱の上をこすります。

目的

手のひらを縦方向に刺激する。

施術の目的

足底を強く圧迫する。

補足

施術のコツ:“②”で前腕を自身の大腿部に置くことがたいへん大事で、これにより施術部位の安定が得られます。

 5-02 拇指球と小指球の指圧

  

手順

① 術者は四指をマッサージを受ける人の手の甲にあてて支えます。
② 左右の拇指で、マッサージを受ける人の拇指球と、小指球を交互に圧迫します。

施術の目的

拇指球と小指球の指圧

補足

施術のコツ:真っ直ぐに押すだけでなく、術者の左右の拇指を使って掌を横に反らすようにする方法もあります。

 5-03 手のひらのストレッチ

  

手順

① 手の甲に術者の四指をあてて支え、人差し指から小指の付け根には術者の拇指をあてます。
② 手のひら中央の窪みを裏返すようなイメージで左右の拇指を中央から両脇に向けこすります。手のひらは通常中央が凹んでいますが、そこに反りを与えて凸のかたちにします。

施術の目的

拇指球の筋と小指球の筋のストレッチと圧迫

補足

施術のコツ:マッサージを受ける人の拇指の股と小指の股に、術者の小指の股を組み合わて施術する方法もあります。

 5-04 手首を廻す

  

手首を廻す

手順

① 前腕を内側に回し、手のひらを下に向けます。
② 両手の拇指を揃えて、マッサージを受ける人の手関節の手背側、中央にあてます。
③ 両手の四指でマッサージを受ける人の手のひらを支え持ちます。
④ 手関節にあてた拇指と肘関節を軸にして、左右に2,3回づつ廻します。

施術の目的

橈尺手根関節の可動域を拡げる。

補足

施術のコツ:肘関節と手のひらを回転の軸にして手根部を廻す、というのは解説を聞いてもわかり辛いところです。そこで、最初のうちは関節を術者から見て上下に動かしてみましょう。そのうちこの動きに自身が慣れてきたら回転も加えてみます。

 5-05 前腕の指圧

  

前腕の指圧

手順

① 術者は相手の拇指と示指の付け根を、拇指と人差し指で持って支えます。術者の前腕は自身の大腿部に載せ、安定させます。
② もう一方の手の四指を揃えて伸ばし、前腕の裏側にあてます。
③ 四指と拇指を使って相手の前腕を挟む要領で、肘関節の方向に移動しながら指圧します。

施術の目的

前腕伸筋群の指圧

補足

施術のコツ:“①”の肢位になったときに術者から見える範囲の上肢の中央に拇指があたるようにしてください。

 5-06 上腕の前方中央に指圧

  

手順

① 前項に続いての施術ですので、相手の拇指と示指の付け根を、前項同様の姿勢で支えています。 
② もう一方の手の四指を揃えて伸ばし、上腕の裏側にあてます。
③ 四指と拇指を使って相手の上腕を挟む要領で、肘関節の方向に移動しながら指圧します。

施術の目的

上腕二頭筋の指圧

補足

施術のコツ:ここでも、術者から見える範囲で、上腕中央に拇指があたるように施術してください。

 5-07 中手骨の間の筋を指圧

  

中手骨の間の筋を指圧

手順

中手骨の間にある溝に、拇指の側面を差し入れて圧迫します。それぞれ2,3回の指圧をします。 

施術の目的

中手骨どうしの間にある筋(背側骨間筋)の指圧

補足

施術のコツ:各中手骨どうしの間隙は狭いので、指の腹をそのままあてて押しても中手骨の間に指が入りません。指の骨は正面に比べて側面が薄い構造になっていますから、指の側面を使って施術しましょう。

 5-08 中指の側面で屈筋腱をこする

  

手順

① 拇指の腹をマッサージを受ける人の指の上にあて、
② 中指の側面を使って相手の指の手のひら側をこすります。指の付け根から指先方向に向け、2、3回に分けて施術します。

施術の目的

指の屈筋腱を軽くこする

補足

施術のコツ:相手の指の背に当てた拇指の位置を2、3回末梢方向にずらしていくと上手く施術できます。

 5-09 指を挟んで引き、破裂音を出す

  

指を挟んで引き、破裂音を出す指を挟んで引き、破裂音を出す

手順

前項の施術に続いて、指が相手の指から離れる瞬間に音を出すことができます。
① 前項の施術中に、術者自身の中指、薬指、小指の三本を揃えて軽く握り、手のひらに僅かな空間を残しておきます。
② 人差し指と中指でマッサージを受ける人の指をはさみ、
③ 相手の指先が術者の拇指と中指の間を抜けた瞬間、
④ 全ての指を握る(それでも一定の空間は残しておく)と上手くいく、かもしれません。

施術の目的

施術にメリハリをつける演出

補足

施術のコツ:引き抜く瞬間に術者の指を鳴らすわけです。
本施術は全体の流れの中で必須ではなく、施術にメリハリをつけるためのシャレのようなものと解釈して構いません。音がでない人は・・・無理しなくていいです。

 5-10 四指を反らす

  

四指を反らす

手順

① マッサージを受ける人の肘を曲げ、手のひらが術者から見える向きにします。
② 相手の手掌部背側面に、術者の中指・薬指・小指の三本をあて、
③ 手のひらから指先にこすり上げるように指の屈筋腱を擦ります。

施術の目的

前腕にある指の屈筋群をストレッチする

補足

施術のコツ:手首及び手指は、思いのほか深く背屈できるものです。関節に痛みを訴える場合以外なら、思いきって施術していただいてよいと思います。

 5-11 指を組み合わせて手関節を廻す

  

手順

① 手首を回転の中心にするため、片手でマッサージを受ける人の手首を下から軽く支えます。  
② もう一方の手指を、相手の手指と組みます。
③ 相手の中手指節間関節が伸展するように指を組み、手前に引きながら手関節を廻します

施術の目的

大腿後面の筋に圧迫を加える

補足

施術のコツ:手首を支える方の手は、強く握らないようにしましょう。思わず力が入り過ぎ、相手に不快感を与えることがあります。
⇒本施術は次項に続きます。

 5-12 指を組んで末梢方向に引く

  

指を組んで末梢方向に引く

手順

① 前項に続き、マッサージを受ける人の指と手指を互いに組み合わせたまま、
② 指を互いに挟む力を少しずつ緩めながら術者の手指を手前に引き抜くようにします。

施術の目的

指を末梢方向に引き、指関節に負圧を与える。

補足

施術のコツ:指の側面では皮膚直下の骨との間に神経が通過しており、本施術で指関節を横方向に閉じる力が強すぎると、相手も自分も指を傷めます。相手に不快感を与えない程度の力で施術してください。
ご自身の左右の手指を組んで練習してみると参考になるでしょう。

 5-13 肘を立てて上腕二頭筋を圧迫:1

  

肘を立てて上腕二頭筋を圧迫

手順

① マッサージを受ける人の手を頭の方向に挙げ、手のひらを床に着け、指先を手前に向けておきます。こうすると上腕の後ろが術者に見えるようになり、上腕二頭筋が緩みます。
② 術者は片手で相手の肘を押さえて固定し、 
③ 揃えて伸ばした四指と拇指を使って、上腕を挟むように指圧します。

施術の目的

肘を立てて上腕二頭筋を圧迫

補足

施術のコツ:上腕後面にある筋の指圧に見えますが、実は上腕二頭筋をスラックオフしながら指圧しています。ご自身の腕で確かめてみてください。
注意:肩関節の関節可動域に制限がある人もいます。挙上させた際に苦痛が無いか確認してください。

 5-14 肘を立てて上腕二頭筋を圧迫:2

  

肘を立てて上腕二頭筋を圧迫

手順

① 引き続きマッサージを受ける人の手を頭の方向に挙げ、手のひらを床に着け、指先を手前に向けておきます上腕の後ろが術者に見えており、上腕二頭筋が緩んでいます。
② 前項とは逆の手で相手の肘を押さえて固定し、 
③ 揃えて伸ばした四指と拇指を使って、上腕を挟むよう前項同様に指圧をします。

施術の目的

上腕二頭筋の圧迫

補足

施術のコツ:“③”で四指と拇指を使いますが、共に指先は用いません。指の腹を使って指圧します。

 5-15 上腕の肘近くを叩く

  

上腕の肘近くを叩く

手順

① 術者は片手でマッサージを受ける人上腕の肘頭から10cmくらい離れた部分を押さえて支え、
もう一方の手で握りこぶしをつくり、その小指側を使って上腕の肘に近い部分を2,3回叩きます。

施術の目的

伸張反射を利用した上腕三頭筋の瞬間収縮

補足

施術のコツ:四指を軽く曲げ、手の中に空間を作っておくと、軽くて乾いた施術音が出て、心地よい刺激を与えます。

 5-16 橈骨と尺骨の間を指圧

  

手順

① マッサージを受ける人の上肢を、胴体と直角になるよう外に広げ、手のひらを上に向けておきます。
② 術者は上肢に対して直角に座ります。(=相手の正中線と平行に座ることになります。)
③ 前腕掌側の中央に、左右の拇指を横一線に並べ、橈骨と尺骨の間を手首から肘関節まで指圧します。

施術の目的

前腕の屈筋群を指圧

補足

施術のコツ:前腕の向こう側(=橈骨側)に両手の四指をあて、施術部位の安定をはかります。

 5-17 前腕の指圧:尺骨に沿って

  

前腕の指圧:尺骨に沿って

手順

① 前項に引き続き、術者はマッサージを受ける人の正中線と平行に座り、相手上肢を胴体と直角になるよう外に広げ、手のひらを上に向けておきます。
② 前項で指圧した前腕掌側の手前側に、左右の拇指を横一線に並べ、尺骨の上を手首から肘関節まで指圧します。

施術の目的

前腕の屈筋群を指圧

補足

施術のコツ:前腕の向こう側(=橈骨側)に両手の四指をあて、施術部位の安定をはかります。

 5-18 上腕掌側中央のラインを指圧

  

上腕掌側中央のラインを指圧

手順

① 前項に引き続き、術者はマッサージを受ける人の正中線と平行に座り、相手上肢を胴体と直角になるよう外に広げ、手のひらを上に向けておきます。
② 術者は左右の拇指を横一線に並べ、相手の上腕掌側の中央を肘関節から肩関節手前まで指圧します。

施術の目的

上腕二頭筋の指圧

補足

施術のコツ:上腕の向こう側(=頭の方がわ)に両手の四指をあて、施術部位の安定をはかります。

 5-19 上腕掌側手前側に指圧

  

上腕掌側手前側に指圧

手順

① 前項に引き続き、マッサージを受ける人の正中線と平行に座り、上肢を胴体と直角になるよう外に広げ、手のひらを上に向けておきます。
② 術者は左右の拇指を横一線に並べ、相手の上腕掌側の手前側を肘関節から肩関節手前まで指圧します。

施術の目的

上腕三頭筋の指圧

補足

施術のコツ:施術のコツ:この肢位で施術すると上腕骨は中央部で凸型の断面を持っています。ここを横切る神経がありを、過大な力で指圧すると不快感をあたえますので注意してください。加重の目安を『前腕:上腕=2:1』と考えると良いでしょう。

 5-20 前腕掌側に掌圧

  

前腕掌側に掌圧

手順

① 前項に引き続き、マッサージを受ける人の正中線と平行に座り、上肢を胴体と直角になるよう外に広げ、手のひらを上に向けておきます。
② 術者は片方の手のひらを相手の手首の上に軽く載せ、
③ もう一方の手のひらで、手首から前腕までを掌圧します。

施術の目的

前腕掌側面へのやわらかな圧迫

補足

施術のコツ:術者は自身の手のひらを柔らかな布のように見立て、相手の上肢を包むように圧迫します。

 5-21 上腕掌側に掌圧

  

上腕掌側に掌圧

手順

① 前項に引き続き、マッサージを受ける人の正中線と平行に座り、上肢を胴体と直角になるよう外に広げ、手のひらを上に向けておきます。
② 術者は片方または両方の手のひらで相手の上腕を掌圧します。

施術の目的

前腕掌側面へのやわらかな圧迫

補足

⇒本施術は次項に続きます。

 5-22 腋下動脈の圧迫と開放

  

腋下動脈の圧迫と開放腋下動脈の圧迫と開放

手順

① 前項に引き続き、マッサージを受ける人の正中線と平行に座り、胴体と直角に上肢を置き、手のひらを上に向け片方の手のひらを相手の手首の上に軽く載せています。
② 前項の施術で手のひらが肩関節に達したら、上腕骨の骨頭に手のひらの窪みを被せるように載せて、
③:肘を伸ばし、小指球に体重を掛け、20~30秒圧迫を続けます。
④:小指球への荷重を滑らかに抜き(急に離さないこと!)上肢の前面を肘関節を経て手首に至るまで撫でます。

施術の目的

腋下動脈の圧迫により一旦上肢への血流量を不足させておき、その後復活させると血流が蘇り上肢が温かく感じられます。これで「再生のイメージ」を演出するのです。
同様の施術は第1章にもあります。

補足

施術のコツ:腋下動脈の脈動は、第1章の大腿動脈を押さえる場合と違って触知し難いものです。これは、本施術の圧迫部位が大胸筋の下側にあるためです。脈動が触知できなくてもちゃんと施術はできていますので、ムキになって圧迫を強める必要は全くありません。

 5-23 上腕を垂直方向に引き上げる

  

上腕前面を垂直方向に引き上げる上腕前面を垂直方向に引き上げる

手順

① 前項に引き続き、マッサージを受ける人は胴体と直角に上肢を開き、手のひらを上に向けています。
② 相手の上肢手前に両膝をつき、
③ 左右の手を揃えて、四指と拇指で上腕前面の筋肉を持ち、床から垂直方向に引き上げます。

施術の目的

上腕二頭筋のストレッチ

補足

注意:上腕前面の筋肉を引き上げる方向は垂直方向で、これは必須ですから厳格に守ってください。引っ張る方向がわずかでも術者の胴体に向かうと、意味の無い施術となってしまいます。
施術のコツ:指先は用いません。四指も拇指も指の腹を使って施術します。

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《 他の章との組み合わせ 》

ご覧のように、本章は他の章との密接な連続性はないので、本章だけ切り離して他の章と組み合わせてもよいでしょう。