タイ・マッサージWEB講座

第4章:側臥位で下肢から背部へ

 第4章の概要

《 施術の流れと順序 》

この章では前項で仰臥位にしたクライアントの足元に移動し、下肢への施術をします。
第2章をクライアントの左足裏から施術してここまで来ました。この章が終了したら、第2章のはじめに戻って、今度は右足裏から施術します。

 4-01 遠い方の下腿外側に手根圧

  

遠い方の下腿外側に手根圧

手順

① マッサージを受ける人は仰向けになり、術者は下腿に対して直角に向き合うように位置を決めます。
② 両膝、両脚先で体を支え(=立て膝をつく)、右の足先を術者の左手で支え持ち、あるいは床に手を着いて前腕で足先を押さえるなどして、相手の股関節を内旋させます。
③ 手首部分を使って、脛骨の前面にある筋肉を床方向に圧しつけます。

施術の目的

脛骨前面にある筋を圧迫する。

補足

施術のコツ:足首を背屈することで下腿の足指の伸筋群が緩みますが、そのすぐ後ろ側にある腓骨筋(=屈筋として働く)は緊張します。逆に足首を底屈すると腓骨筋は緩むが指伸筋は緊張するのです。
前述の足指の伸筋群と腓骨筋は前後に重なって下腿の外側にあるので、本施術では伸筋/屈筋が共に圧迫を受けることになります。 過度の圧迫を加えると術後の筋肉痛を招くことがあります。この手法での圧迫は軽くおこなってください。

 4-02 右の足裏を前腕で圧迫

  

右の足裏を前腕で圧迫右の足裏を前腕で圧迫

手順

① 今度は術者に近い方の下腿に施術します。
② 脛骨の骨の際にラインを想定したとき、このラインが真下に見えるよう、腰の高さを高くして構えます。
③ マッサージを受ける人の足底に沿うように術者の左足をつき、足関節を背屈させて下腿の伸筋群を緩めます(=スラックオフ)。
④ 距腿関節(足首前面)の中央から膝の手前まで、脛骨外側のキワを徐々に移動しながら指圧します。
つま先を12時、腓骨を3時の方向としたら、脛骨際のラインは12時ちょうどになります。

施術の目的

前脛骨筋の指圧

補足

施術のコツ:足首を背屈させて(=スラックオフ肢位で)脛骨の前面にある伸筋群の深層に圧迫を伝えます。

 4-03 腓骨の前方に想定したラインを指圧

  

腓骨の前方に想定したラインを指圧

手順

① 引き続き、術者の手前側にある左下腿外側に施術します。座り位置は前項よりも多少低い方が楽に施術できます。
② 腓骨の前側に沿って指圧をします。外踝から膝手前まで徐々に移動します。

施術の目的

下腿の伸筋群に指圧

補足

施術のコツ:腓骨は両端の外踝と腓骨頭は皮膚直下に触れますが、途中が伸筋群中に埋もれており、『腓骨前方のライン』は指の感覚だけでは探り難いところです。
脛骨のキワに四指を軽くあて、距離を測る物差しにすると良いでしょう。

 4-04 腓骨の後側のラインを指圧

  

腓骨の後側のラインを指圧

手順

① 引き続き左下腿外側に施術します。前項や前々項よりも更に低く座り、
② 術者は前腕の少なくとも一方を自身の大腿部に載せ、手元が安定するように構えます。
③ 腓骨の後ろに沿ってラインを想定し、
④ 手首を背屈しながら、拇指でこのラインを押し上げるようにして指圧します。外踝から膝手前まで徐々に移動して施術します。

施術の目的

下腿の伸筋群の指圧

補足

施術のコツ:腓骨は両端の外踝と腓骨頭は皮膚直下に触れますが、途中が伸筋群中に埋もれており、『腓骨後方のライン』は指の感覚だけでは探り難いところです。
脛骨のキワに四指を軽くあて、ガイドにしながら指圧するラインを決めていきます。

 4-05 大腿前面中央のラインに指圧

  

大腿前面中央のラインに指圧

手順

① マッサージを受ける人の下肢に対し直角に座っています。
② 座り位置は高め(立て膝)にし、
③ 膝蓋骨外側縁から下前腸骨棘を結ぶ、大腿前面中央のラインを想定し、膝方向から数回に分けて指圧します。

施術の目的

大腿直筋の指圧

補足

施術のコツ:この部分の筋の張りが強いと、筋肉に弾かれて指圧する手元の安定が定まらないと感じられることがあります。そんな場合は大腿を左右の四指で包み込むようにして左右の拇指を中心にあて、指圧します。
下肢の断面に時計の文字盤を想定し、足の親指を12時、腓骨頭を3時としたとき、『大腿前面中央のライン』は1時のところにあります。

 4-06 大腿外側前方のラインに指圧

  

大腿外側前方のラインに指圧

手順

① 仰向けになった相手の下肢に対して直角に座っています。
② 座り位置は中くらいの高さにし、前腕の少なくとも一方を術者自身の大腿部に載せて、手元の安定をはかります。
③ 膝蓋骨真横から大転子の前方を結ぶ、大腿外側前方のラインを想定し、このライン上を(相手にとっての)外側から指圧します。膝方向から数回に分けて指圧します。

施術の目的

大腿四頭筋のうち、外側広筋の指圧

補足

下肢の断面に時計の文字盤を想定し、足の親指を12時、腓骨頭を3時としたとき、『大腿前面中央のライン』は2時のところにあります。

 4-07 大腿外側後方のラインに指圧

  

大腿外側後方のラインに指圧

手順

① 術者はマッサージを受ける人の下肢に対して直角に座っています。
② 座り位置は最も低い高さにし、前腕の少なくとも一方を術者自身の大腿部に載せて、手元の安定をはかります。
③ 膝関節真横から大転子の後ろを結ぶ、大腿外側後方のラインを想定し、
④ 手首を背屈しながら、拇指でこのラインを押し上げるようにして指圧します。外踝から膝手前まで徐々に移動して施術します。

施術の目的

大腿四頭筋のうち外側広筋と、大腿二頭筋の指圧

補足

下肢の断面に時計の文字盤を想定し、足の親指を12時、腓骨頭を3時としたとき、『大腿前面後方のライン』は4時のところにあります。

 4-08 下腿外側面の掌圧

  

下腿外側面の掌圧

手順

① 引き続きマッサージを受ける人の下肢に対して直角に座っています。
② 手前側(左)の膝を軽く曲げて持ち上げ、向こう側の脚(右)に重ねます。
③ マッサージを受ける人の左足手前に膝を着き、左脚の肢位を安定させます。
④ 膝の外側に術者の右手をあてて押さえ、左の手のひらを使って、足先から膝手前まで下腿の外側を掌圧します。

施術の目的

下腿の外側にある筋の柔らかい圧迫

補足

施術のコツ:手指を伸ばし、掌と手指を全て使って、施術する面に均等に力が及ぶようにします。

 4-09 大腿の外側面を掌圧

  

手順

① 前項に続き、術者はマッサージを受ける人の下肢に対して直角に座っています。
② マッサージを受ける人の左足手前に膝を着き、左脚の肢位を安定させています。
③ 前項と左右の手を入れ替え、膝の外側に術者の左手をあてて膝をおさえます。
④ 右の手のひらを使って、膝関節から大転子まで大腿の外側を掌圧します。

施術の目的

大腿の外側の柔らかい圧迫

補足

施術のコツ:手指を伸ばし、掌と手指を全て使って、施術する面に均等に力が及ぶようにします。

 4-10 大腿内側を前腕で圧迫

  

大腿内側を前腕で圧迫大腿内側を前腕で圧迫

手順

① 前項終了後、マッサージを受ける人の下肢を外旋して術者の右大腿部に載せます。左手で相手の下腿を軽く押さえて自身の体勢を安定させてもよいでしょう。
② 大腿部内側に、前腕の肘寄り1/3の部分を使って圧迫を加えます。
③ 加重が最大になったとき、前腕が一部分だけにくい込んで過負荷を与えないよう、最後に前腕を軽く回外して力を逃がします。
大腿内側面を2,3回に分けて施術します。

施術の目的

大腿内転筋群の圧迫

補足

施術のコツ:初心者が“③”の「前腕の回外で力を逃がす」というのをあまり意識し過ぎると、最初から腕を廻そうとしてしまい、失敗することがあります。当講座では前腕を使う場合も加重の調節を推奨していますが、最高の加重となる少し前で前腕を回外すると上手くできます。
⇒次項の施術に続きます。

 4-11 大腿内側を上腕で圧迫

  

手順

① 引き続き、マッサージを受ける人の下肢を外旋して術者の右大腿部に載せています。
② 自身の上体を前方にまるめ、相手の左大腿部後面に、上腕の肘寄り1/3の部分をあてます。
③ 上腕を手前に引き寄せ、圧迫を加えます。

施術の目的

大腿後面の筋に圧迫を加える。

補足

施術のコツ:大腿後面を大きくまとめて引き寄せるよう心がけましょう。

 4-12 ふくらはぎの指圧:脛骨の内側縁に

  

ふくらはぎの指圧:脛骨の内側縁に

手順

① 引き続き、マッサージを受ける人の下肢を外旋して術者の右大腿部に載せています。
② 術者の上体を足元に向けます。
③ 相手の左足関節を底屈して(=下腿三頭筋のスラックオフ)、術者の左下腿を足先に載せておきます。
④ 左右の肘を下腿の両脇に出し、上体を前方にまるめて下腿に覆いかぶさるように構え、
⑤ 両手の母指で、内踝の後ろから脛骨の際を通過して膝関節手前まで4~5回に分けて指圧します。

施術の目的

腓腹筋内側頭の指圧

補足

施術のコツ:本項では肘を曲げて指圧するため、体重移動による加圧の調整ができません。それでもゆっくり増圧し、「溜め」の時間を置いてから減圧する、という原則を守るよう心がけてください。

 4-13 大腿部外側を前腕で圧迫

  

大腿部外側を前腕で圧迫

手順

① 術者の右大腿部に載せていた相手の左脚を持ち上げて膝を上に向け、
② 左手で膝を少し右脚側に倒し、
③ 腰の位置を低くして、右前腕の肘寄り1/3の部分をクライアントの大腿外側の後ろにあて、
④ 上方向(マッサージを受ける人からみたら前方)に押し上げるように圧迫します。急激な入力をせずに丁寧に押し上げてください。

施術の目的

大腿二頭筋の圧迫

補足

施術のコツ:前腕の肘に近い部分には縦方向に少し凹になった部分があります。ここを目的部位の凸部分にあてると効率よく施術できます。

 4-14 脛骨外側を肘で圧迫する

  

手順

① 前項終了時にはマッサージを受ける人の下肢は膝が宙に浮いた状態です。
② 今度は術者の右手で相手の膝をやさしく保持し、
③ 術者の上体を曲げて下腿外側に左肘が届くようにし、
④ 左前腕の肘に近い部分を使って下向きに圧迫をします。

施術の目的

前脛骨筋、長指伸筋への圧迫

補足

施術のコツ:初心者は下腿外側にあてている肘がぐらついてしまうことがあるでしょう。“②”の右手による膝の固定をしっかりとおこなうことと、術者の左肘の凸部と相手の下腿の凹部をあわせるようにすることで解決できます。

 4-15 足の関節を廻す

  

距腿関節を廻す

手順

① 術者は体幹をマッサージを受ける人の足方向に向けて座り直します。
② 右手の拇指を距腿関節前面の中央にあて、
③ 左手で足先を持って、大きく廻します。右・左廻り各一回で充分でしょう。

施術の目的

距腿関節を関節可動域限界まで動かす。

補足

施術のコツ:距腿関節上の右拇指が回転の軸になります。また、次項でおこなう下腿外側・脛骨際のラインに続くので、施術が終わっても右拇指を離さないでください。

 4-16 下腿外側・脛骨際のラインを指圧

  

下腿外側・脛骨際のラインを指圧

手順

① 前項に引き続き、体幹をマッサージを受ける人の足方向に向けて座っています。
② 足先に術者の下腿を置いて固定し、両手の拇指で前脛骨部を指圧します。
③ 腓腹筋に左右の手の四指をあてて部位を固定します。

施術の目的

前脛骨筋、長指伸筋の指圧

補足

施術のコツ:術者は体幹を前方に曲げて、両肘を左右に広げるようにすると圧を加えやすくなります。できるだけ強弱のリズムをつけて施術してください。

 4-17 下腿後面のストレッチ

  

下腿後面のストレッチ

手順

① 前項に引き続き、体幹をマッサージを受ける人の足方向に向けて座っています。
② マッサージを受ける人の足裏、指の付け根辺りに左右の四指をあて、
③ 肘を伸ばして体幹を後(=相手の頭の方向)に傾け、足先を手前に引きます。

施術の目的

下腿三頭筋のストレッチ

補足

施術のコツ:術者の右膝を軽く曲げて、その上の空中に相手の下腿を維持するとバランスを崩しにくくなります。

 4-18 踵を拳で叩く

  

手順

① 引き続き、体幹をマッサージを受ける人の足方向に向けて座っています。
② 前項では、術者の両肘は伸びきっていましたが、本項では両肘を僅かに曲げて術者の体をすこし起こします。
③ 左手を足裏から離し、右手の四指だけで自身の体幹を支えます。
④ 左手で拳を作り、その小指側を踵に強く2回くらい叩きつけます。

施術の目的

施術にメリハリをつける演出。

補足

施術のコツ:体を叩くやり方はいくつかありますが、本項でやってもらいたいのは叩いた瞬間に拳を止めるやり方です。叩き終わった拳が踵からそのまま動かない方法で、重い衝撃が加わります。

 4-19 下肢後側にストレッチ

  

下肢後側にストレッチ

手順

① マッサージを受ける人の足先に左手を掛けて自身の体を起こし、その体の軸に対して直角になるよう自身の体の向きを変え、自身の膝は床につきます。
② 左手の四指で踵を持ち、前腕の内側で足裏を支えます。
③ 右手で大腿部の上を軽く押さえつつ、左前腕で足先を頭の方向に引き寄せます。

施術の目的

下肢後面の筋にストレッチする。

補足

注意:大腿部を過大な力で押し付けると、膝に過伸展の応力が加わり、損傷を与えかねません。ごく軽く置くだけにしてください。

 4-20 下腿の瞬間ストレッチ

  

手順

① 前項に続き、マッサージを受ける人の体の軸に対して直角になるよう、自身の膝を床につけており、左手の四指で踵を持っています。
② 右手を膝の下にいれて一旦持ち上げて軽く膝を屈曲させます。
③ 踵を持った左手を末梢側に引くと同時に、
④ 膝の下に入れていた右手を外します。

施術の目的

下肢後面の筋、特に下腿三頭筋をストレッチする。

補足

施術のコツ:右手が膝を持ち上げ過ぎたり、左手で踵を引き過ぎたりすると、膝関節に不快感を与えます。膝の屈曲を僅かにすれば避けられる問題ですので注意してください。

 4-21 大腿前面に掌圧:指を組んで

  

手順

① 移動:術者は体幹を相手の頭方向に向け、左下腿を跨いで両膝と両足先を着きます。
相手の左下肢を内旋させ、クライアントの土踏まずをの上に術者の左足首が位置するようにして、左脚の内旋を維持します。(上図)
② 指を組んだ両手のひらを大腿部の上に置き、膝蓋骨の上(膝蓋骨中枢寄りの意。膝蓋骨を押すわけではない)から鼠径部の方向に3,4回圧迫します。

施術の目的

大腿四頭筋のやわらかい圧迫

補足

注意:“①”で、気付かないうちにマッサージを受ける人の足首に座ってしまうことがあります。痛みを与えるので気をつけましょう。

 4-22 大腿部前面を叩く

  

大腿部前面を叩く

手順

① 前項に引き続き、体幹をマッサージを受ける人の頭方向に向け、左下腿を跨いで両膝と両足先を着いており、相手の左脚を内旋させています
② 左右の指先を合わせ、小指側の縁で大腿の前面を叩きます。膝上から鼠径部に向け5,6回にわけて施術します。

施術の目的

施術にメリハリをつける演出

補足

施術のコツ:両手を合わせて指を軽く開いたまま打ち付けると、小指から順に各指が互いに接触して乾いた施術音が出ます。

 第2章を右側から/または第5章

《 第2章~第4章を反対方向から施術 》

ここまで第2章から第4章まで、マッサージを受ける人左側から連続して施術してきました。この後、第2章~第4章を体の右側から施術します。
左右から施術がすべて終わったら、第5章に移ります。