タイ・マッサージWEB講座

第1章:あおむけで下肢に施術

 第1章の概要

《 施術のはじまり 》

本章は、足首から末梢に重点を置いたセクションで、マッサージを受ける人に仰向けになってもらい、左右の下肢に施術します。 下腿のストレッチからはじめて、大腿動脈の圧迫手技まで施術します。

《 相手の体調を観察する 》

表情は、顔色は、と相手の健康状態をそれとなくチェックします。 はじめて接する相手にはもちろん、施術経験がある方でも体調は毎日変化しますから油断できません。 発熱や咳、膝や股関節、肩関節の疾患が施術後に悪化したとしたらどうでしょう?たとえそれがあなたの施術に無関係であっても相手側はいろいろな憶測をするかもしれません。 わたしの場合は質問票を用意し、連絡先、年齢、最近の健康状態、関節や筋の不具合の有無をおたずねしています。

 1-01 ふくらはぎのストレッチ

  

ふくらはぎのストレッチふくらはぎのストレッチ

手順

マッサージを受ける人の両脚を揃え、その足元に座ります。自らの腹に両肘をあて、両手の手根部を相手の足指の付け根部分にあてて、頭の方向に押します。

施術の目的

腓腹筋のストレッチ

補足

施術のコツ:ストレッチに先立って、距腿関節を軽く動かせる範囲であらかじめ背屈させておきます。この体制が整ったら上の手順でストレッチをかけます。

 1-02 脛の外側のストレッチ

  

脛の外側のストレッチ

手順

①:マッサージを受ける人の左足元に、膝を開いて座ります。
②:右手で足首を上から押さえ、左手で足の甲を床方向に押し付けます。

施術の目的

腓腹筋のストレッチ

補足

施術のコツ:左手で足先を床方向に押し付けると同時に、右手で足首を外側にひねると股関節の内旋を防ぐことができます。
この手技では足首の保持がうまくいかないとストレッチになりません。距腿関節の底屈に伴って、股関節が内転しようとするのです。

 1-03 足底の指圧

  

足底の指圧

手順

①膝を開いてマッサージを受ける人の足元に座ります。 ②足背に四指をあて、部位の安定をはかります。 ③足底に3本のラインを想定し、拇指でまんべんなく指圧します。

施術の目的

足底にある様々な筋の指圧

補足

施術のコツ:顔をうつむけないこと。

 1-04 足根骨を動かす

  

足根骨を動かす

手順

位置決め:図のように足に両手を沿え、左右の人差し指がそれぞれ内踝と外踝に当たる位置に構えます
①中指の側面と拇指で足根骨を挟むようにつかみ、もう一方の手の同じく中指の側面と拇指でその隣の足根骨をつかみます。
②このようにして左右の手でしっかりとつかんだ足根骨どうしをこすりあわせるように動かします。

施術の目的

足のアーチ構造の一部であるこれらの骨に、普段と違う向きから力を加え、関節の動きを滑らかにする。

補足

施術のコツ:この施術は、難度が高いので熟達するまではコースに入れなくても良いです。
本講座で紹介する手技は全部で220もあるので、ひとつくらい跳ばしても大丈夫。

 1-05 足指の屈筋をストレッチ

  

足指の屈筋をストレッチ足指の屈筋をストレッチ

手順

被術者の足元に座ります。
図のように足背に四指をあて、足裏の、足指の付け根の膨らんだ部分(中足指節間関節)に拇指をあて、足指をめくりあげるようにして(=背屈させて)ストレッチをかけます。
最初は拇指の腹で、指が反るにしたがって拇指球を使って施術します

施術の目的

足指を曲げる(=底屈する)筋のストレッチ。指を単に背屈させるのではなく、指を曲げるために働く筋のストレッチだということを意識して施術しましょう。

補足

施術のコツ:あらかじめ限界まで距腿関節(=足の関節)を背屈させてから施術します。

 1-06 足底を拳でこする

  

足底を拳でこする足底を拳でこする

手順

マッサージを受ける人の左足元に膝を開いて座ります。術者は自身の右大腿部に右前腕をのせます。
部位の固定:左足に施術する場合、術者は左手(右足に対するときは右手)で足先を軽く握り、ふらつきを防止します。もう一方の(この場合右の)手を握り、拳を作って足底をこすります。足裏の、足指の付け根の膨らんだ部分(中足指節間関節)からスタートし、踵骨に至るまで足底をこすります。

施術の目的

足底の軟部組織(=筋、腱、靭帯、毛細血管など)に刺激を加え循環を促進させる。

補足

施術のコツ:拳で足底をこする前に、あらかじめ距腿関節(=足の関節)を背屈させ、下腿のストレッチをしておきます。
こうすれば本施術のついでに下腿後面にある筋がストレッチできますし、クライアントの足底に拳で寄りかかることができ、手もとがふらつく心配がありません。

 1-07 足裏の縦のアーチを指圧

  

足裏の縦のアーチを指圧

手順

相手の左の足元に膝を開いて座り、自身の左大腿部に左前腕をのせます
部位の固定:左足に施術する場合、術者は右手(右足に対するときは左手)で足先を軽く握り、ふらつきを防止します。もう一方の(この場合左)拇指で足の親指の付け根からスタートし、踵骨に至るまで足底のアーチに沿って指圧します。

施術の目的

足底の縦アーチを構成する軟部組織に刺激を加える。

補足

施術のコツ:四指の先を足の小指側にあて動かさず、拇指だけを移動させることで、アーチに沿ってきれいに圧迫することができます。
こうすれば、手先も安定し、余分な力を使う必要がありません。

1-08 内くるぶしと踵の周りを撫で回す

  

内くるぶしと踵の周りを撫で回す

手順

左手の中指と薬指の先端をアキレス腱の外側にあて、母指の腹と母指球を使って内くるぶしの周囲をやさしく撫でます。

施術の目的

内踝周囲の皮膚の血行促進。

補足

施術のコツ:四指の先をアキレス腱外側にあてて動かさずに、手首を自由に廻しながら内踝の周囲の皮膚の凹凸に、拇指と拇指球の凹凸がぴったりと接触するようにします。
感じとしては『赤ちゃんの頭を洗うように、』と説明しています。

 1-09 アキレス腱を挟む

  

アキレス腱を挟む

手順

被術者の左の足元に座ります。
アキレス腱の下から手を入れて、指の腹だけを使って内外から腱をやさしくつまみます。

施術の目的

アキレス腱周囲の軟部組織に刺激を加える。

補足

アキレス腱の幅は本人の親指の幅くらいです。

1-10 小指側の足の縁を指圧

  

拇指圧

手順

被術者の足元に座ります。
左下肢(=股関節)を内旋させて、足先を右手で持って内旋を維持します。左手を広げて足背にあて、拇指をつかって指圧します。
小指の付け根から踵に向けて数回に分けて圧迫します。

施術の目的

小指側の足の縁を刺激する。

補足

施術のコツ:足先を押さえて内旋を維持している手に、無意識に必要以上の力がはいってしまうことがあります。へたくそなマッサーの印象を与えますので注意しましょう。

 1-11 外踝と踵の周りを撫で回す

  

拇指圧

手順

被術者の左の足元に座ります。
①左足に施術する場合、術者は右手で足先を図のように持ちます。
②被術者の踵の下に差し込んだ四指の先をアキレス腱の内側にあてます。
足を持ち上げる必要は無く、術者の手を床につけその上に被術者の踵を載せておいても構いません。
③拇指の腹から拇指球全体をつかって、外踝のまわりを撫で回します。

施術の目的

外踝の周囲の皮膚の血行を促進させる。

補足

施術のコツ:四指の先をアキレス腱内側にあてて動かさずに手首を自由に廻しながら外踝の周囲の皮膚の凹凸に、右手の拇指および拇指球の凹凸がぴったりと接触するようにすること。

 1-12 アキレス腱を挟む

  

アキレス腱を挟む

手順

前項(1-11)に続いて右手のひらをアキレス腱の下に入れ、指の腹だけを使って内外から腱をやさしくつまみます。

施術の目的

アキレス腱周囲の軟部組織に刺激を加える。

補足

施術のコツ:四指も拇指、指先を一切使わず、指の腹だけを使いアキレス腱を挟み込むようにします。

 1-13 中足指の間を指圧

  

中足指の間を指圧

手順

被術者の左の足元に座ります。
足背の中足指の間の溝に人差し指を横向きに入れ、その指の上からもう一方の手で被術者の足ごと握ってしまいます。
それぞれの溝に付き2箇所ほど場所を変えて施術します(中足指は5本あるので、間の溝は4箇所あるわけです)。

施術の目的

中足骨の間にある筋の圧迫

補足

施術のコツ:隣り合う中足指の間の溝は2~3cmですから、溝一箇所について2回ほど圧迫すれば充分です。
また、中足指まわりの皮膚に爪が刺さらないように、爪の手入れをしておきましょう。

中足指の間を指圧

手順(別法)

上記の施術方法は、人差し指を横向きに圧迫するので、指の神経を直接圧迫することになります。違和感を感じるこ人もいるでしょう。 そんな場合は右の図のように拇指を横向きに使っても良いでしょう。
①足底に左右の四指をあて、
②足背から中足指の間の溝に左右の拇指を横向きに入れて押し付けます。
溝は全部で4本あるので、この方法では3回押さえれば済んでしまいます。

補足

ヒトの手足の指先の骨は、丸い断面を持っていません。ちょっとつぶれた楕円状になっています。本施術で指の側面を使うのは、側面の方が骨が薄くて狭いところに入り易いからです。

 1-14 足指の付け根を軽く撫でる

  

足指の付け根を軽く撫でる

手順

被術者の左の足元に座ります。足の底に四指を、足背から左右の拇指を使って、足指の付け根(中足指節間関節)の少し中枢よりの部分を軽く撫でます。

施術の目的

中足指節間関節部分に通常とは逆方向の力を加える。

補足

中足指節間関節の位置:足指を曲げ(=底屈して)たときに足の甲側に盛り上がって見えるのが関節です。指の股は「水掻き」で、中足指節間関節はここより中枢側に指一本入ったくらいのところにあるのです。

 1-15 足の指を引っ張る

  

足の指を引っ張る

手順

左足元に膝を開いて座ります。図のように足を片手で支え持ち、指を一本ずつ引っ張ります。

施術の目的

不明。気持ちよく感じる人もいます。

施術のコツ

足指は手指と違って先端が膨らんだ形をしています。図のように上下から指を持つと指が容易に引っ掛かるので、強く引き過ぎないように注意が必要です。

 1-16 足関節を回転させる

  

足関節を回転させる足関節を回転させる

手順

①左足元に膝を開いて座ります。
②右の手のひらの上にマッサージを受ける人の踵を載せます。
③左手で足先を持ち、踵を軸にして回転させます。

施術の目的

足関節の関節可動域を高める。

施術のコツ

初心者は足先を握る手に力が入り過ぎ、知らずのうちに足指の付け根などに痛みを与えていることがあるので注意しましょう。

 1-17 足首を持って下肢を引っ張る

  

足首を持って下肢を引っ張る

手順

左足元に膝を開いて座ります。相手の右膝を伸ばし、右足の土踏まずに術者の左膝をあてます。
右手で足先を、左手で踵を支え持ちます。
術者はこの姿勢を保ったまま、体重を後方に預けます。

施術の目的

脊柱起立筋群と左下肢後ろ面の筋群のストレッチ。

施術のコツ

①両膝の間の床に、大きな穴が開いているように仮想し・・・(緑色で図示)
②相手の踵をその中に引き込むようなつもりで施術します。

 移動

相手の右足元に移動し、「1-01」から「1-17」までを右脚に対しておこないます。
それが終わったら「1-18」以降の施術に進みます。
※解説文は右/左を入れ替えて解釈してください。

 1-18 足裏の指圧

  

足裏の指圧

手順

①:仰臥位の相手の下腿の間に膝をついて座ります。
②:左右の母指をそれぞれ被術者の足底にあて、「1-03」で想定したのと同じ、足裏の3本のラインに沿って、右・左と、交互に指圧します。

施術の目的

足底の軟部組織の指圧

施術のコツ

肘をまっすぐ伸ばして真下に体重を掛けるつもりで施術します。
下段左右のイラストは体の左右への傾け方がちょっと大げさですね。これでは上体を左右に傾け過ぎなので反対に体重移動するだけで疲れてしまいます。あくまでも心積もりを示したもの、とご理解ください。

 1-19 下腿内側の指圧

  

下腿内側の指圧

手順

①:マッサージを受ける人は仰向けになっています。術者は膝を左右の下肢の間について座っています。
②:左右の四指を脛骨に軽くあて(あてるだけ。ガイドにするだけなので四指で圧迫しないこと。)、
③:拇指で下腿内側を左右交互に指圧します。

施術の目的

腓腹筋内側頭の指圧

施術のコツ

前項の施術と同様に、肘をまっすぐ伸ばして真下に体重を掛けるように施術します。
このイラストでは指圧している母指がちょっとしか見えませんね。図は肘を伸ばしていることが肝心だということを示したもの、とご理解ください。・・・失礼しました。

 1-20 膝蓋骨を廻す

  

膝蓋骨を廻す

手順

①:マッサージを受ける人は仰臥位で軽く脚を開いています。術者は相手の下腿の間に膝をついて座ります。
②:相手の下腿を術者の下腿の両側に引き寄せて一部を密着させます。
③:手のひら中央のくぼみを、被術者の膝蓋骨に密着させて持ち、
④:大腿四頭筋を手前(下腿方向)に引き寄せつつ膝蓋骨をぐるりぐるりと廻します。

施術の目的

大腿四頭筋のストレッチ。膝蓋骨周囲に妙な心地よさを感じますが、この理由はわかりません。

施術のコツ

相手の下腿を術者の下腿の両側に密着させる。これで、膝蓋骨を廻す際に股関節の内旋を防ぎ、施術の効果が発揮され易くなります。

 1-21 大腿部前面の掌圧

  

拇指圧

手順

①:マッサージを受ける人の左右の下腿の間に膝をついて座ります。
②:相手の下腿を術者の下腿の両側に引き寄せて一部を密着させます。
③:以上が整ったら大腿部前面を掌圧します。膝蓋骨から鼠径部に向かって交互に圧迫を掛けながら進みます。

施術の目的

大腿四頭筋の圧迫

施術のコツ

母指が陰部に接触するのを避けるため、5本とも指を揃え、指先を外側に向けておきます。
大腿骨はからだの前方に緩く弓なりの反りがあるので手根部で強い圧迫をすると痛みを与えます。手のひら全体に体重を分散させて圧迫するようにします。

 1-22 大腿動脈の圧迫と開放

  

大腿動脈の圧迫と開放

手順

①:マッサージを受ける人の左右の下腿の間に膝をついて座ります。
②:鼠径部(腹と下肢の境目)の内側1/3の部分に母指をあて、大腿動脈を圧迫します。
③:肘を伸ばして拇指に体重を掛け、20~30秒圧迫を続けます。
④:拇指への荷重を滑らかに抜き(急に離さないこと!)大腿部前面を膝蓋骨を経て下腿に至るまで撫で下ろします。

施術の目的

大腿動脈の圧迫と開放。一旦下肢への血流量を不足させておき、その後復活させると血流が蘇り、下肢が温かく感じられます。これで「再生のイメージ」を演出します。
同様の施術は第5章の上肢編にもあります。

施術のコツ

一時的にせよ大腿動脈の止血などを行なって健康上の問題がないのでしょうか?気になるのは血液が凝固するのではないかということですが、このような短い時間では問題になりませんのでご安心を。

 第2章に向けて移動

大腿動脈の圧迫と開放

移動

ここで第2章に移る準備をします。左足元に移動し、相手の左膝を軽く曲げて外転、外旋させます。
施術者は膝を曲げて座り、開いた膝の間に相手の左足がくるように座ります。 常々無駄のない落ち着いた動きでエレガントに施術することを提唱していますが、これに欠かせないのが施術者が何処に位置するか、ということ。ちょこまかと座り位置を変えたりすると、やっぱり素人臭い感じになりますね。まあ、そこは訓練を積むうちに最小限の移動で施術ができるようになりますから大丈夫。

補足

常々無駄のない落ち着いた動きでエレガントに施術することを提唱していますが、これに欠かせないのが施術者が何処に位置するか、ということ。ちょこまかと座り位置を変えたりすると、やっぱり素人臭い感じになりますね。まあ、そこは訓練を積むうちに最小限の移動で施術ができるようになります。